-第132回-
部下の「認めて欲しい」という欲求を満たす(1)
- 従業員のモチベーションを上げるために最も重要なもの ー

「部下のやる気を高めるにはどうすればよいか?」は経営者や管理職にとって最大のテーマといっても過言ではないでしょう。最もモチベーションに影響を与えるのは「承認欲求(自分を認めて欲しいという欲求)を満たすこと」です。なぜ承認欲求が大事なのか、どのように満たすのかを考えていきます。

1.「カネ」でも「やりがい」でも説明できない
「モチベーションの源は何か?」を問うと、「カネ派」と「やりがい(自己実現)派」に分かれます。
まず「給与が高ければモチベーションが上がる」という主張を考えてみましょう。確かに同じ仕事をするのであれば給与は高いに越したことはありません。しかし給与が高い会社の従業員がモチベーションが高いとは限らないし、給与がそれほど高くない会社でもモチベーションが高いケースはあります。そもそも人は無給のこと(たとえば趣味や部活動、ボランティアなど)でも熱心に取り組むことからも、「モチベーションの源はカネである」という考え方には無理があります。
一方、「やりがい(自己実現)派」にも違和感があります。もちろん将来の目標に向けて修行するという意識で仕事をする人もいるとは思いますが、「自己実現」で仕事を取り組んでいる人が多数派だとは思えません。また、「1人1人が考える『自己実現』の場を企業が提供できるのか」という現実的な問題もあります。
 
2.自分の価値を認めて欲しい
「カネ」でも「やりがい(自己実現)」でもモチベーションの源泉を説明できないとしたら、他に何があるのでしょうか?1つの考え方として、承認欲求というものがあります。承認欲求とは、「自分のことを認めて欲しい」という欲求のことです。
他社でも十分通用する実力がある人が、あまり給与水準が高くない企業にとどまっているのも、転職が面倒だからというより、社内で承認欲求が満たされているからだということも考えられます。逆に給与水準が高くても、モチベーションに欠けるのは、社内で自分が認められていないからだと考えることもできるでしょう。

次回は、承認欲求に基づいたモチベーション・マネジメントについて具体例を見ていきましょう。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝 元