-第126回-
ビジネスモデルはメリハリが大事!「損して得取る」利益の設計のしかた(1)
-あえて儲けないお客や商品をつくる-

企業は自社のすべての顧客やすべての商品からすぐに儲けようとしますが、「あえて儲けないお客や商品をつくる」「すぐに儲けない」といった「損して得取る」という発想が長期的には大きな利益につながります。このようなメリハリのあるビジネスモデルは差別化につながるとともに、結果的には売上あるいは利益の最大化に貢献します。今回はメリハリの効いたビジネスモデルついて、実例を交えながらご説明します。

1.ビジネスモデルのメリハリとは何か?
駅前などで配られている広告ティッシュを考えてみてください。配布している企業としては、もちろんティッシュで儲けるのではなく、同封のチラシで店に誘導して店の商品で儲けようとしているのです。これは立派なメリハリです。

また、学習塾は通常、小学生対象クラスは比較的安い料金設定にしています。これは小学生のうちに自社で囲い込んでしまい、中学生・高校生クラスに誘導してそこで儲けようというものです。これもメリハリを使った例です。

兵庫県立大学経営学部の川上昌直教授によれば、メリハリには次のようなものがあります。

<誰から儲ける?(顧客ミックス)>
・全員から儲ける
・あえて儲ける相手と儲けない相手を設ける

<何で儲ける?(商品ミックス)>
・全商品から儲ける
・あえて儲ける商品と儲けない商品を設ける

<いつ儲ける?>
・ただちに儲ける
・時間をかけて儲ける

2.「誰から儲ける?」顧客のメリハリ
まずあえて「儲ける顧客」と「儲けない顧客」を設定するパターンを見てみましょう。

・遊園地など家族連れレジャーでは、子供料金は安く大人料金は高く設定しています。これは子供では儲けず大人で儲けるパターンです。
・カップル料金では女性料金は安く男性料金は高く設定しています。男性顧客から儲けることを前提にしています。
・スマホのゲームやDropboxでは、エントリーモデルは無料で提供し(初心者からは儲けない)、それでは飽き足らなくなったユーザーに対し課金しています(ヘビーユーザーから儲ける)。
・テレビやラジオ、雑誌、Youtubeなどインターネットサイトでは、視聴者(コンテンツ)からは儲けず、広告主(広告出稿料)から儲けます。広告モデルと呼ばれます。

3.「何で儲ける?」商品のメリハリ
次にあえて「儲ける商品」と「儲けない商品」を設定するパターンを見てみましょう。

・ゲームビジネスでは、ハードウェアは安価に抑えられていますが、ゲームソフトは高マージンです。まずハードウェアを買わせてその後のソフトで儲ける仕組みです。プリンター(プリンター本体は低マージンだがインクやトナーは高マージン)、携帯電話通信業(携帯電話本体は低マージンだが通話料は高マージン)も同様です。

・牛丼屋では牛丼は低マージンでサイドメニューの卵や味噌汁などは高マージンです。サイドメニューで儲けるというやり方は、ガソリンスタンド(ガソリンは低マージンで洗車や消耗品は高マージン)、カラオケルーム(カラオケ利用料は低マージンでドリンクや食べ物は高マージン)、ハンバーガーショップ(ハンバーガーは低マージンでドリンクやポテトは高マージン)などにも見られます。

次回は、3つめの「時間軸のメリハリ」と「メリハリをつけるために着眼点」についてお知らせします。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝 元