-第106回-
生産性を上げるために本当に必要なこと
― 生産性を高める原則を守る ―
前回ご紹介した顧客価値の基本式をおさらいしておきます。
生産性=アウトプット(成果物)÷インプット(投入資源)
今回は「分母のインプットを下げる(作業の効率化)」について取り上げます。具体的には業務遂行のための労力や時間を下げるための視点をご提供します。作業の効率化に最も熱心な業種は製造業です。製造業で用いられる効率化の視点を他の業種でも応用してみてはいかがでしょうか。
1.ECRSの原則
生産現場での改善の原則として、ECRSの原則というものがあるのをご存知でしょうか。ECRSとは、改善の4原則のことで、工程、作業、動作を対象とした分析に対する改善の指針です。
■E:Eliminate(排除)…なくせないか
■C:Combine(結合)…一緒にできないか
■R:Rearrange(交換)…順序の変更はできないか
■S:Simplify(簡素化)…簡素化・単純化できないか
改善は、排除、結合、交換、簡素化の順番で検討するのが一般的です。なぜなら、実施した場合の効果が大きい順になっているからです。
著名な経営学者のドラッカーは、「一番のコスト削減はやらないことである」といっています。無駄なことをやめるのが一番インパクトがあります。
次にバラバラでやっていることをまとめてやったほうが効率的です。たとえば「同じ作業を複数のスタッフで行っているのであれば、1人の人がまとめて処理する」「異なる時間帯に同じ作業をやっているのであれば、同じ時間にまとめて処理する」といったことです。
作業の順番を入れ替えることで効率が上がる場合があります。たとえば、工場の機械が調子が悪くなってからメンテナンスするよりも、調子が悪くなる前にメンテナンスしておけば、機械停止によるロスタイムを短くできる場合があります。
最後は複雑にやっている作業をできるだけ単純化します。チェックシートや作業フロー図を用いて作業を明確にすることも単純化につながります。
そもそもECRSの原則は生産改善のためのツールですが、製造業に限らず、普遍的に応用することができます。
2.トヨタの「7つのムダ」
改善というと有名なのが、トヨタ自動車です。今では「KAIZEN」として海外でも広く取り上げられています。トヨタ自動車では、以下の7つのムダを極力排除することに力点が置かれています。
1.作り過ぎのムダ(例:必要以上に製品や仕掛品を作ってしまう)
2.手待ちのムダ(例:後の作業担当者が前の作業完了まで待機状態におかれる)
3.運搬のムダ(例:一度に運べるのに何度も運んでいる、運搬の移動距離が長い)
4.加工そのもののムダ(例:必要以上に仕上げ作業を行う、不必要な検査を行う)
5.在庫のムダ(例:必要以上に製品や部品・資材を在庫してしまう)
6.動作のムダ(例:不必要な動作や効率的でない動作で作業している)
7.不良をつくるムダ(例:不良品を作ってしまった結果、手直しや廃棄が生じている)
「7つのムダ」は製造業に限らず飲食業でも当てはまります。また事務作業においては、特に「2、4、7」を意識したいところです。
NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元