-第103回-
中小企業の事業承継のポイント
- 事業承継の分類とメリット・デメリット -
事業承継とは、自分が経営する事業を、引退に伴い後継者に引き継ぐことをいいます。事業承継は、経営者にとっては遠い話と思われがちで優先順位が下がり先延ばしにされることが多いのですが、最悪の場合廃業に至ることもあります。少子高齢化が進む中、中小企業の経営者も高齢化が進んでおり、その平均引退年齢は70歳と言われています。その一方で、後継者不足も深刻になってきており、廃業を予定している中小企業の廃業理由として「後継者難による廃業」は約3割%を占めると言われています。
事業承継は大きく分けると3つに分類する事が出来ます。
① 親族内承継
② 役員・従業員等による承継
③ 第三者による承継(M&A)
事業承継の傾向としては、近年は親族以外への事業承継が増加しているものの、依然として親族(息子や娘)への承継が多く、特に小規模事業者の場合は親族内承継が過半を占めています。中規模事業者では親族外承継が親族内承継よりも多くなってきたものの、個人保証の引継ぎや自社株式・事業用資産の買い取りといった問題が生じるケースが多いようです。また、以前は「M&Aは大企業のもの」「中小企業は対象にならない」「M&Aをしたらリストラをされて社員がかわいそう」などのイメージがあったようですが、近年は「友好的M&A」を掲げた積極的なM&Aも多く活用する事例が増加しています。
以下にそれぞれのメリットとデメリットを纏めてみたいと思います。
① 親族内承継
(メリット)社内外の関係者からの心情的受け入れが容易。後継者を早期に決め、承継に向けた準備期間を設ける事が可能。
(デメリット)親族内に経営者能力や意欲がある者がいることが限定的。相続人が複数いる場合、後継者の決定、経営権の集中が困難な場合が存在。
② 役員・従業員等による承継
(メリット)親族内に適任者がいない場合でも候補者を探すのが容易。業務を精通しているため、従業員からの理解を得るのが容易。
≪デメリット≫親族内承継と比べて、関係者から心情的に受け入れにくい場合が存在。株式取得等の資金力がない場合が多数。個人債務保証の引き続き等で問題が発生する可能性。
③ 第三者による承継(M&A)
≪メリット≫身近に適任者がいない場合でも広い候補者を外部に求める事が可能。現オーナー経営者が会社売却による利益を獲得出来る可能性。
≪デメリット≫希望の条件(従業員の雇用、価格等)を満たす買い手を見つけるのが困難。
(事例)従業員や取引先に請われて社長を引き受けた従業員により承継した製缶板金業A社
先代社長には息子が二人おり、従業員として働いておりました。先代社長はまだ若い長男を自分の後継者にすべく、専務に取り立てました。その際、最終的に事業を承継することとなるC氏は会社を去るのですが、会社を離れて半年も経たないうちに、先代社長だけではなく、従業員からも早く戻ってきてほしいという声であり、その声を聴いて社長になることを承諾しました。
このように、親族がいても、社内で有能な人材が事業承継をすることもあるのです。
次回は活用しやすい補助金の説明をいたします。
※M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略で「合併と買収」という意味。複数の会社が一つの目的のために協力して新しい会社になるといったイメージです。
NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一