-第70回-
第2創業で新たな事業領域に挑戦する(2)
- 第2創業のポイントは何ですか -

 第2創業は「創業」の場合と同様に、社長として「どのような会社にしたいのか」という経営理念やビジョンに基づいて新しい事業を考えることが必要です。
この事業が儲かりそう、この事業は需要が伸びそうと言うだけで、新しい事業を始めると失敗する可能性が高くなります。
新しく社長となり、どういう会社にしたいかを考えたうえで、第2創業を行うか否か、行う場合はどのような事業にするかを決めることが大事です。
また、第2創業を行う場合、既存事業との関係がどの程度あるかも考慮します。既存事業との関係が濃ければ、通常の創業よりも有利に事業が始められます。

多くの「創業」は、ある程度の資金と借り入れから始め、そこから設備・備品の手配、事務所や店舗の借入や内装工事、仕入れ等を行い、また、従業員を必要な場合は面接をして採用します。
ゼロから事業を始める場合がほとんどです。これに対して、「第2創業」の場合は、既に会社に多くの財産があります。
ここでいう財産とは、お金、不動産や設備等もそうですが、社内外の種々の情報の蓄積や、信頼できる従業員、
取引実績がある仕入先や購入先、販売先、金融機関、士業の人々、また、地域や業界の経営者仲間など経営に関連する多くの関係者等を含みます。
第2創業はこれらの財産を活用できることが通常の「創業」と大きく異なります。

 第2創業をする場合、上述の財産を生かすことが重要です。このため、この財産が生かせる、つまり、自社の強みを生かせる新しい事業を始めに検討します。
例えば、先代の創業時には周りは畑だった場所に倉庫があるが、現在は商店や住宅が立ち並ぶ中にある場合、その場所を生かした事業への進出を検討できます。
しかし、ラーメン店が儲かりそうということで、金属部品の製造業者が新事業としてラーメン店を始めた場合、既存の財産を生かせる範囲は狭いと思われます。

 一方、第2創業は通常の「創業」に比べて、失敗したときのダメージが大きくなる場合があります。
通常の「創業」は、借入金や従業員が比較的少なく、小規模で始める場合が多いですが、
第2創業の場合は、既存の従業員、従来の事業の仕入先や購入先があり、また、金融機関からの借入が相当額の場合もあります。
さらに、従来の事業で部品や原材料を製造している場合は、販売先である顧客に部品や原材料を供給できなくなると、販売先が生産を行えず連鎖倒産を引き起こすことも考えられます。
このため、第2創業の事業が従来の事業でカバーできない規模で失敗した場合、従業員や取引先などへの影響は通常の「創業」より大きくなります。
第2創業は、通常の「創業」よりもメリットやデメリット、リスク、従来の事業と新規事業のバランス等をよく考慮し、十分な事業計画を立てて、判断する必要があります。

 なお、第2創業も行政からの補助金や助成施策を受けられる場合があります。中野区の経営相談等で、行政の助成の活用方法や、事業計画等の相談をすることをお勧めいたします。

NPO法人中野中小企業診断士会 相川尚之

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