-第64回-
事業をする上で大切な「お金」の管理方法(2)
- お金に困らないためにやるべきことは? -
前回のメルマガではお金が足りなくなる原因をお伝えしました。今回はお金に困らないためにはどのようにしたらよいのかについてお話しします。
お金に困らないためには、常にお金の「入り」と「出」のバランスを取り、お金が不足しないように注意していく必要があります。
例えば、サラリーマンのご家庭においても、お給料以上に経費が出ていくようなら、家計が立ち行かなくなりますよね。事業におけるお金の管理も家計の管理と同じです。
では、事業を行っていく中で、お金を管理するためにどうしたらよいのでしょうか。
やるべき主なことを2つ挙げてみました。
(1)「帳簿」を作成する
創業したら経理はすべて税理士さんにお任せしよう、と考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、それではお金の動きがタイムリーにわかりません。今、現金や預金がいくら残っているのか、売上、仕入れ、経費はどれくらい発生したのか、資産や借入金はどのくらいあるのか、まずは自分自身で帳簿を作成し現在の事業状況を把握しておく必要があります。
ご家庭でも家計簿を付けていないと、何にいくら使ったか、いくらお金が残っているのかがわからないのと同じですね。
何も手書きで帳簿を付ける必要はありません。現在は数々の「会計ソフト」(パソコンで帳簿を作成するためのソフト)が販売されていますので、これを利用して帳簿作成を行うことが一般的です。
最近の会計ソフトは簿記の知識が無くても、簡単に帳簿が作成できるようになっています。毎日の取引を画面の指示通りに入力すれば、自動的に現金出納帳が作成され、その他の帳簿や決算書も作ることができます。
個人事業者向けの会計ソフトは1万円代から、小規模法人向けのものは3万円代からあります。たいていは無料のお試し版がインターネットからダウンロードできますので、まずはそれで使い勝手を試してから利用を検討すればよいのです。
(2)「資金繰り表」を作成する
これは耳慣れない言葉かもしれません。「資金繰り表」とは事業を行っていく中で、入ってくるお金と出ていくお金の状況を把握するための一覧表です。「前月繰越」「収入」「支出」「財務(借入金の出入りなど)」「翌月繰越」などの区分に分かれており、それぞれに記入することで、お金の出入りが一目でわかるようになっています。
創業前の段階では、まずは予測の数値で「資金繰り表」を作成してみましょう。これを作成することで、将来のお金の流れを推測してみます(下記のHPに書式があります)。
結果としていくらお金が残ったかは帳簿を付けることでわかりますが、これから先、いついくらのお金が入金されるのか、いついくらお金を支払う必要があるのか、それを予測することは、資金繰り表を作らないとわかりません。お金が不足する事態を招かないためにも重要なことなのです。
Aさんは創業の際に、コンサルタントから創業計画書とともに資金繰り表も作成するよう勧められたので、今後の資金繰り表を作成してお金の出入りを予測してみました。すると半年後に創業計画書では利益が出ているのに、資金繰り表ではお金が不足することがわかり、事前に対策を打つことができました。またその後、資金繰り表を作っていることが金融機関にも好印象を与え、融資を受ける際もスムーズに話が進みました。
資金繰り表でお金の流れをつかんで、お金が不足しそうなら、前号でご紹介した「お金が足りなくなる要因」と照らし合わせてみます。そうすると、取るべき対策が見えてきて、だんだんとお金の管理がうまくできるようになっていきます。
事業を安定的に軌道に乗せるためにも、ぜひ挑戦してみてください。
(参考) 資金繰り表の書式が掲載されているHP
・「経営計画策定に役立つ各種資料について」(日本政策金融公庫 中小企業事業HP)
※簡易版と詳細版、作成手順と記載例が掲載されています。
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_chusho.html
NPO法人中野中小企業診断士会 近藤有希子