-第55回-
夢をカタチに近づける創業計画書作成のコツ(2)
- 資金調達に成功する創業計画書の書き方 -

前回は創業計画書の目的や重要性についてお話ししました。後半の今回は、融資や補助金審査に通りやすい創業計画書の主な項目の具体的な書き方について、中野区の創業支援資金の創業計画書の例でお話します。

書式と記入例は下記の区役所のホームページにありますので参照してください。http://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/162000/d014367.html
 
まず「1.事業内容等」のうち、「(1)創業の目的と動機」と「(2)創業に関連した業務経験」は、融資の審査でも注目されます。創業予定者の経験や創業への想いの強さが成功を左右するためです。ですので、特に創業する事業に関連する仕事の経験については、何年間、どんな職場のどんな仕事でどんな経験を積んだのか、なぜ、どんな想いで創業するのかについてできるだけ詳しく書くと良いでしょう。

 次に「(3)事業の特色・セールスポイント」についても、できるだけ他の同業との違いや強みを具体的に書くことがポイントです。具体的とは、例えば、生活雑貨のWEBショップであれば商品はどんな種類のものか(キッチン用品か、インテリア製品か、文具系かなど)、コンセプトは(輸入品か国産品か、ファミリー向けか単身者向けかなど)、どこから仕入れるのか、価格帯はいくらくらいか、などです。

 また、想定するお客様のターゲットもできるだけ絞り込んで具体的に書きましょう。なるべく絞り込む方が特色を出すことができ差別化しやすいといえます。たとえば、美容室であれば「抜け毛や白髪が気になり始めた40代以降の近隣に住む主婦層」などとします。

 さらに、どのようにしてお客様を集めるのかについてもできるだけ具体的に考えて書くと計画の実現性が評価されやすくなります。例えば、チラシのポスティングやポスター、友人知人からの紹介、インターネットを使ったブログやSNS(フェイスブックやツイッターなど)での情報発信などが考えられるでしょう。なお、以上のようなターゲットや集客方法は、商品・サービスなど事業の特色にマッチしていることが必要になります。

 次に、「6.収支計画」の立て方についてです。収支計画は、区の計画書式にあるように、月ごとの損益計画(業績計画)を立て、3年分を作成します。どれだけ売上が上がるか、それに対して材料や商品の仕入や家賃、人件費などの経費はどのくらいかかるか、その結果、利益としていくら残るのか、残ったお金から借入金の返済ができるのかといったことを数字で計画します。創業後最初の数ヶ月程度は赤字だとしても、徐々に売上高が増えていく結果、その後は黒字となるような計画が自然です。

大事なことは、計画した数字のもとになる前提根拠や内訳をはっきりさせておくことです。つまり、売上計画なら「だいたいこれくらいの売上になる」ではなく、1か月間の売上高=1日平均売上高×営業日数、1日平均売上高=平均客単価×1日平均客数、などのもとになる数字から計画を導き、それを示すことが大切になります。

次に費用の計画のポイントは、売上高に比例する費用(変動費)とそうでない費用(一時的費用または固定費)を分けて考えることです。商品や原材料の仕入などが変動費です。売上高の計画をもとに、その〇〇%として計画します。同業の平均的利益率や仕入価格などを調べた数値をもとに計画すると良いでしょう。

店舗や事務所の家賃や従業員を雇う場合の人件費やその他の経費が固定費です。売上の変動に関係なく、1ヶ月あたりいくらくらいかかりそうかを見積もります。

例えば、フラワーアレンジメント教室の講師として経験豊富なBさん(50歳女性)の例があります。Bさんは、自分や専業主婦の友人がもつフラワーアレンジメントの技術と資格を生かせる事業を立ち上げたいと考えていました。
そこで、店舗やオフィス向けに高品質な造花のフラワーアレンジメントを定期的に提供するサービスの事業化を決意し、中小企業診断士に相談しながら創業計画書を作成しました。そして、創業計画書をもとに応募した国の創業補助金にもみごと採択され、会社も設立して事業を始めることができたのです。 
Bさんは店舗などにフラワーアレンジメントを飾るニーズや、料金や利便性でサービス利用のメリットがあること、営業の方法や材料仕入先なども含め事業化が可能な根拠を一つ一つ事業計画書の中で具体的に説明しました。その点が創業補助金に採択された最大の理由と考えられます。

以上にみてきたように、創業計画書は「具体的に書く」、「根拠を示す」という点に気を付けて書くことがポイントです。ぜひ、あなたも創業計画書を少しずつでも書き始めて、「夢をカタチに」近づけてみてはいかがでしょうか。

NPO法人中野中小企業診断士会 大西俊太