-第228回-
創業前から意識しておきたい、人手不足解消のコツ(1)
― [労働基準法は強行法規! 守れないなら退場もやむなし] ―
創業間もない頃は、人手不足を実感しにくいものです。しかし、将来的に事業を拡大していくためには、人材確保は避けて通れません。そこで今回は、創業前から意識しておきたい人手不足解消のコツについて、2つのポイントに絞ってお伝えします。
1. 労働基準法などの法律は「守るべき当然のルール」
「労働基準法を守っていたら会社がつぶれる」と考える経営者がいますが、これは誤解です。労働基準法は、労働者の安全と健康を守るために制定された法律であり、違反すれば司法処分を受けるだけでなく、民事上の責任も問われます。
労働基準法は「強行法規」であり、会社と労働者間の合意があっても、違反する労働契約は無効となります。つまり、法令順守は企業にとって義務であり、守れないなら事業継続は困難となる可能性が高いのです。
なお、健康保険や厚生年金保険といった社会保険についても、要件を満たしていれば加入のうえ保険料を納付する義務がありますが、これを無視する経営者もいるようです。もちろんこれも法律違反となり、「強制加入のうえ過去に遡って保険料納付を求められ現金が枯渇する」等、深刻な事態に発展することもありえます。
2. 労働環境改善は人材確保の必須条件
人手不足を解消するためには、単に求人を出すだけでは不十分です。優秀な人材は、より良い労働環境を求めて転職を検討します。2000年代頃までは、「会社に入ったら3年間は勤めないと、転職に不利になる」といった風潮がありましたが、労働人口が減少している時代においては過去のもの。
そのため、創業前から以下の点に意識し、労働環境改善に取り組むことが重要です。
・長時間労働の是正:
過度な残業や休日出勤は、労働者の心身に悪影響を及ぼし、離職の原因となります。業務効率化や人員配置の見直しなどを行い、適正な労働時間を確保しましょう。ただし、「残業=悪いもの」という短絡的な考え方ではいけません。数字上の残業時間を抑制することに気を取られるあまり、管理ばかり厳しくすることで、かえってサービス残業の発生に繋がる可能性があるほか、労働者の「やる気」を削ぐ結果にもなりかねません。必要な/意味のある残業と、不要な/過度な残業とを区別して考えましょう。
・安全衛生面の充実:
労働災害は、企業にとって大きな損失となります。安全設備の整備や定期的な安全教育などを行い、安全衛生面に配慮した職場環境を構築しましょう。
・ワークライフバランスの支援:
育児や介護、趣味など、仕事以外の生活も充実できるよう、制度や環境を整えましょう。フレックスタイム制やテレワーク制度の導入、会社独自の休暇制度の制定などが有効です。
まとめ
労働基準法を遵守し、労働環境改善に積極的に取り組むことは、人手不足解消だけでなく、優秀な人材の確保にもつながります。これらの点を意識し、持続可能な事業成長を目指しましょう。
創業前から意識しておきたい、人手不足解消のコツ(2)では、具体的な人材確保策についてご紹介します。
NPO法人中野中小企業診断士会 平賀千晴(ひらがちはる)