-第220回-
AIを活用したDXへの取り掛かり①
~AIのビジネスへの普及と学習手法~

AIを活用したDXというと何が思いつくでしょうか。Chat GPTもさることながら、大手通販サイトでは、消費者の行動や購買の履歴をAIにより分析し、個人レベルで人の好みに合った商品を提供することを行ったり、AIにより商品の判別、荷分けを行い物流の効率化を図ったり、季節変動等の影響を考慮したうえで、店舗商品の品ぞろえ、定期的な発注、生産計画に活用するなど、様々な分野で活用され始めています。
AIを活用したDXなどは一部の先端企業、大企業が取り入れるものという印象があったかもしれませんが、今やChatGptがMicrosoftの検索サイトに実装されるなど、個人レベルでもAIを活用した技術の恩恵を賜れる環境が急速に普及し始めている状況にあります。
AIによる環境変化は企業の経営において、もはや無視できない存在になってきており、今後のAIの発展をどのように予想し、対応していくかが今後のビジネスを発展させる上でカギとなります。
一方で不思議なことに例えば会社の経理、税務申告の業務について、20年以上前から、これらの作業は将来すべてコンピュータによる自動化が進み、人の仕事はコンピューターに置き換わると言われてきましたが、現在ある程度の効率化は図られましたが、いまだビジネスを行う上での必須の作業として人の手を要する状況にあります。
なぜ、AIの技術により一見不可能に思えたことが人間に成り代わり、一方でAIにより近い将来置き換わると予想された業務がAIに置き換わらないのか。AIの学習手法を解説するとともに、近い将来にAI技術により可能となること、まだまだ時間を要するであろうことを予想し、AIをビジネスでの味方につけるための取っ掛かりを解説していきます。
AIの学習方法は大きく分けて「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」に分類されます。「教師あり学習」とは、人間が正解を教えることでAIが学習する方法です。例えば、画像認識の場合、人間が正解のラベルをつけた画像を与えることで、AIがその画像を見て正解を学習します。「教師あり学習」の具体的な活用例は、過去の気象データやその土地ならではの天気の特徴、季節特有の雨の降り方などを学習し、予測モデルを構築するなどの天気予報への活用や、株価予想、スパムメールの判定などがあげられます。
「教師なし学習」は、人間が正解を与えずにAIが自らデータからパターンを見つけ出す方法です。例えば、クラスタリングという学習方法は、AIがデータを自分でその特徴を分類していきます。「教師なし学習」の具体的な活用例は顧客の属性やニーズに基づいてグループ分けを行ったり、顧客に対し商品のレコメンドを自動で行うWebサイトの構築、画像の自動分類などに応用されています。
次回は自動車の自動運転などに活用されているAIのもう一つの学習手法である「強化学習」についての解説と、AIを今後どのように自社のビジネスに取り込んでいけば良いかについて解説していきます。
NPO法人中野中小企業診断士会 河野裕樹