-第192回-
ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)とは(1)
-人の採用が困難となる中で-

みなさんはビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)という言葉をご存知でしょうか?
BPOとは(Business Process Outsourcing ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の頭文字をとった言葉です。その名の通り、業務プロセスの一部を企画段階から業者にアウトソースすることを指します。企画段階から実施まですべてを担当してもらうため、アウトソースする一部にまったく人材がいらなくなります。以前からアウトソーシング自体はありましたが、上流工程から他社にアウトソースするというのが従来のアウトソーシングとの違いです。
BPOがなぜ注目を浴びてきているのでしょうか?
その要因は生産性向上と人手不足への対応のためです。物価上昇により政府は、物価を上回る賃金上昇を求めております。商品やサービス価格の転嫁が難しい場合、賃金を上げることができないのが現実ではないでしょうか?しかし、最低賃金が上昇した場合はその対応をしなければなりません。賃金上昇に備えて生産性向上をする必要がありますが、その手段の一つがBPOなのです。
 また、高齢化が進展しており65歳以上の人口が総人口に占める割合も3割弱となっております。働き手といわれる生産年齢人口(15歳から65歳までの人口)は減少しつづけており、今までは高齢者によりながく働いてもらうことで人手不足に対応してきました。しかし、コロナ禍で働くこと自体をやめる高齢者の方も多く、また満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めることで経営に行き詰まり人手不足で倒産する中小企業が増加しています。
 では、BPOでもたらされるメリットとはどのようなものなのでしょうか?
・コア業務にリソースを集中できる
BPOによる業務プロセスの外注化により、ヒト・モノ・カネといった貴重な社内リソースの浪費を防ぎ、コア業務に集中したリソース配分が可能となります。BPOが適しているのは、総務や人事などの間接部門です。BPOによりこれらの部門の業務プロセスの見直しを行い、最適な人員配置を行えるようになると、コア業務の生産性向上につながります。
・コスト削減
BPOで外部に委託することにより、自社のリソースを割くことなく業務の効率化を図ることができます。自社運用だと人件費やシステム費が固定になりますが、BPOに切り替えることで変動費に計上できるのも経営上のメリットです。
・高い専門性による圧倒的なパフォーマンス
BPOを受託する企業は多くがその道のプロフェッショナルを組織内に登用し、専門的な観点からコンサルティングを行います。従って、高い専門性を持った業務の遂行が可能となり、自社で行うよりもパフォーマンスが良くなるばかりか、時間やコストの削減をも実現することとなります。昨今、働き方の多様化により離職率が高く従業員の入れ替わりが早いため、人材雇用や人材教育に悩みを持つ企業は多いことでしょう。BPOを利用することで人材雇用や育成の負担が軽減されると言えます。
・高いセキュリティレベルの確保
BPOを受託する会社は、ほとんどがISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得しています。強固なセキュリティに守られた状態で業務を行っているため、安心して委託できます。自社で同じレベルのセキュリティを保持しようとすると、かなりのコストと期間を要するでしょう。社員教育も必要となるため、セキュリティの整備は企業にとっては決して軽くない負担です。ただし、BPOは外部に委託する性質上、情報漏えいのリスクがあるため、その点は十分に注意してください。

次回は、BPOのデメリットや具体的な活用事例を説明していきたいと思います。
NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一