-第185回-
ファミリービジネスの事業承継 (2)
― ファミリービジネス経営者が事業承継のために準備すべきポイント ―
事業承継で承継すべきものとしては①人(経営)②資産 ③知的資産です。
①人(経営)の承継
人の承継に重要な後継者教育には社内教育と社外教育があります。社内教育では現場での実務の教育と会社の歴史、想いを繋げることが重要です。経営に必要な幅広い経営知識を身に付けるには幅広く経営知識の学べる後継者向けの外部セミナー等の活用が有効です。また同時に学んだ後継者同士のネットワークの構築も後継者の財産となります。
②資産の承継
資産には株式、事業用資金、経営者保有の設備、不動産そしてマイナスの資産として借入金があります。株式の承継では株主総会の特別議決権を持つために総発行株式の三分のニ以上の株式を承継することが必要です。業績が好調な会社では自社株式の価格が思わぬ高値となっていることがあります。税理士さん等に相談して株式価値を試算して自社株式の評価をしてください。資産の承継には贈与と相続がありますが、相続時に後継者が安心して株式等を承継するには家族会議で事前に相続人相互の承認を得たうえで正式な遺言書として残すことが必要です。資産の中には借入金等の債務も含まれます。経営者の個人保証に関しては「経営者保証のガイドライン」で一定条件を満たすことで外すことが可能ですので金融機関等に相談してください。株式、事業用資産の贈与税、相続税が高額となり事業承継の障害となることがあります。「経営承継円滑化法の事業承継税制」では届け出をすることで贈与税の100%、相続税の80%~100%が免除されます。ただし、相続税の100%免除は2024年3月末までの特例処置です。
③知的資産の承継
知的資産は経営理念や経営ノウハウ、生産ノウハウなど目には見えませんが利益の源となっているものです。自社の想いを繋げる為にも会社の成り立ちや歴史、経営者の事業に対する想い等を直接後継者に伝えて納得してもらう事が重要です。会社の強み、弱みなどは人それぞれで認識が違っている場合があります。社長、後継者、主な従業員等で共通認識が重要です。その際自社の強み、弱み、社外のビジネス機会、ビジネスの障害となる脅威等を見える化するSWOT分析が有効です。
④事業承継の相談先
事業承継は幅広く専門的な知識の必要な課題が各種あります。事業承継を万全に行うには弁護士、公認会計士、税理士等の専門家の力を借りる事が必要です。前回ご紹介した「事業承継ガイドライン」では各種支援策や相談機関が紹介されています。来年の2月には中野区産業振興センターでより詳しくご説明するセミナーを開催する予定ですのでご利用ください。事業承継には各種支援策が用意されています。一人で悩まずにまずは「事業承継・引継ぎ支援センター」等の支援機関を利用して後悔しない準備を進めてください。
NPO法人中野中小企業診断士会 竹内 義男(中小企業診断士・事業承継士)