-第167回-
なぜプロジェクトは遅れてしまうのか?(2)
-遅れる理由と対処法を考える-

前回は、プロジェクトが遅れる原因について取り上げました。今回は、プロジェクトの期限を守るための工夫についてご説明します。

1.どうすればプロジェクトの期限を守れるか?
計画錯誤(時間や予算など計画完遂に必要な資源を常に低く見て、遂行の容易さを甘めに見ること)や、学生症候群(期限のある作業を行う際に、余裕時間があればあるほど、実際に作業を開始する時期を遅らせてしまうこと)に対しては、人間にはそのような傾向があることを自覚するだけでも効果があります。
天井効果(ノルマを達成するとそれ以上に頑張らなくなること)については、どうでしょうか。メンバーたちは、新たに仕事が振られるのを恐れて、本当は完了しているのに、ブラッシュアップと称して、自分のタスクが終わっていない振りをして、フェーズごとの自分のバッファを食い潰してしまいました。
 この場合、「時間の見積もりとバッファを分けて、バッファはバッファとして別に管理すること」が求められます。
 たとえば、プロジェクトがタスクA⇒タスクB⇒タスクCの順に進むとしましょう。各タスクの作業見積りを6日、バッファを4日として、全体で30日で完了する計画を立てたとします。この場合、天井効果に従い、各バッファはタスクごとで食いつぶされてしまいますから、何かトラブルが発生すると30日では完了しなくなります。
よって、具体的には、各タスクは作業見積りの6日だけ割り当て、バッファはまとめて管理します(4日×3=12日)。バッファは切り離してまとめて管理することで、「そのうちやるだろう」といった甘い見通しや、「ある限りの時間を使おう」といった時間の浪費を防ぐことができます。

2.プロジェクトの前半は無駄に費やされる
 様々なチームを調査したところ、チーム発足から、ほとんど何ごとも成し遂げないまま、無駄にかなりの時間を過ごしていることがわかっています。これには、次のような理由が考えられます。

○情報が集まったと感じるまで答えを留保してしまう
十分な情報がないから進められない・判断できないとばかりに、いたずらに情報収集に時間を費やしてしまいます。

○ぎりぎりまで答えの検討を伸ばしてしまう
 早計に決断したのではなく、よく考えた上で決断したという雰囲気を出すために、決断のタイミングを遅らせる傾向があります。

3.プロジェクトの最初から答えを出すという姿勢
プロジェクトの前半で無駄に時間を過ごしてしまうのを防ぐためには、どのような対処が求められるでしょうか。
まずは、プロジェクト全体を細分化して中間目標を設けて、その達成に意識を集中することが基本です。これにより中だるみを防ぐことができ、中間目標を設けることで、当面のハードルが低く感じられ、段階的な挑戦意欲を引き出すこともできます。
また「プロジェクトの最初の段階から答えを出す」という姿勢も重要です。情報が集まるまで決断を伸ばすのではなく、まず仮説をたて、それを裏付ける情報を収集して妥当性を検証するほうがはるかに効率的です。たとえ最初の仮説が不適切であったとしても、他の仮説を検証する時間的な余裕は十分確保できます。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元