-第156回-
事業計画書作りが難しい人のための処方箋
-苦手意識を乗り越える3つのポイント-
「起業したいけれど事業計画書が書けないんです」「とても自分一人で事業計画書を書ける気がしません」「補助金申請をしたいけれど事業計画書が書けないんだ」・・・
創業塾の受講生に手を挙げて貰うと、だいたい7割程度の方が苦手意識を持っているようです。
このコラムを読まれている皆さんは如何でしょうか?
「事業計画書を書くのは難しい」「事業計画書の作成は面倒くさい」なんて思っていませんか?
もし、思い当たることがあればこのコラムがヒントになるかも知れません。
どうしても苦手意識が強い方は、「どこでも出張相談」や「窓口相談」を活用して専門家に協力して貰ってください。中野区産業振興センターでは、事業計画書に関わる講座を毎年開催していますので、講座を受講していただいても良いかと思います。
今月のコラムでは、よくある相談パターンのうち3つに絞って取り上げ、苦手意識を乗り越えるためのポイントをお伝えしていきます。
パターン1:そもそも必要性を感じない
「事業計画書が無くてもお店はできますよね」
このパターンの人は、本当に必要と感じないのか、面倒と感じているだけなのか、苦手と感じているから取り組みたくないのか、そのセリフがどこから出てきたのかを考えてみてください。もし、面倒だったり、苦手だったりした場合には、作成に取り組むことをお勧めしています。本当に必要と感じないのであれば、無理に取り組む必要はありません。必要と感じたタイミングで作成すれば良いのです。
処方箋1:用途を明確にする
「え?そんなことですか?」と感じたかも知れません。
苦手意識を乗り越える最初のステップとして、ここはとても大切です。
日本地図を思い浮かべてください。
東京がどの辺りにあるかを見るための地図と、中野区にある美味しい薬膳居酒屋を探す地図では、縮尺が大きく違いますね。
事業計画書でも用途に合わせた精度で事業計画書を考えることがポイントなのです。
事例1:なんとなく起業を考えていたAさん
「起業はしたいんですが、何をしたいかは明確になっていないんです。だから事業計画書を作ろうと言われてもピンときません」
夫が会社員で収入に問題はなく、特に急いで起業する必要もなかったAさん。子育ても一段落して、なんとなく起業してみたいと考えて創業塾に参加しました。
何をしたいかも明確になっていないのであれば、精密な事業計画書をつくる必要はありません。なんとなく目指す方向性が分かれば良いだけです。
そこで、Aさんには『ビジョンマップ』というものを作成していただきました。これは、自分の潜在意識で求めていることを1枚の紙の上にビジュアルに表現していくもので、精密度は高くありません(詳細はネットで検索していくと出てきますのでここでは触れません)。作った結果、「なんとなくリラクゼーションに関わる仕事が良さそうだ」ということが分かり、勉強を始めることにしました。起業に向けた第一歩を踏み出すことができたのです。
事業計画書といえば、金融機関から融資を受けるためのものをイメージしがちですが、用途によってつくるべきものが変わります。事業計画書の形は用途に合わせて自由に変えてよいのです。
融資をうける、補助金を申請する、身内を説得する、従業員に説明する、等々。自分がどんな用途で事業計画書を作ろうとしているのか、まずはここを明確にしましょう。
次回は、残りの2パターンについてお伝えします。
NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文