-第135回-
高齢者の活用(2)
-高齢者の生産性を上げるには-

前回、70歳までの雇用を義務化していく政府の方向性をお伝えしました。また、日本の生産性が低下していることについてもお伝えしました。そこには、高齢者の生産性を高める余地がまだあるということを示しているのではないでしょうか?
では、なぜ高齢者の生産性があまりあがらないのでしょう。理由は2つあるように思われます。
一つは高齢者自身の問題、もう一つは企業側の問題です。高齢者の立場で考えると、定年以降同じような仕事をしているのに給与が下げられておりモチベーションが低下していることが考えられます。しかし、日本の場合、長期雇用が前提となっており、若年層の時代は生産性より少ない給与で働き、ある年齢以上になると生産性以上の給与をもらっているのが実態です。いつまでもこの状態を続けることができないため、定年とともに給与を引き下げているのです。住宅ローンや子供の教育費にもお金がかかる年代ですから仕方ない面もあります。
一方、企業側の問題とすると、高齢者に気を使っている面もあり、平穏無事に60歳から65歳までの期間を経過したいという思いがあるように思われます。しかし、今後70歳までの雇用が義務化されますと、それでは済まされなくなる可能性もあります。
では、どうすればよいでしょうか?以下、高齢者側と企業側に対して考慮しなければならない点をお伝えしたいと思います。
(高齢者側)
 高齢者の方もいつまで長生きするかわかっていないのではないでしょうか?平均寿命までぐらいかと考えられているのではないかと思います。2018年の日本人の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳です。しかし、社会保障審議会の資料によると1970年生まれの人が65歳に到達した場合、90歳まで生きる確率は男性で40%超、女性で65%を超えると推定されております。想定よりかなり長く生きることとなるため、場合によっては長く働かなければならないこととなる人もおられると思います。このようなことを40歳台から従業員に伝え生涯現役として活躍できる能力を向上してもらうことが必要となると思われます。そのために、早いうちから就業意識を向上するように研修を行うことにより自覚を高めてもらうようにすることが必要となります。
(企業側)
高齢者に対しては人事評価をしないし、給与等もほとんど変わらないという企業も多く見受けられます。これでは、高齢者のモチベーションも高まりません。適正な人事評価を導入し、給与等に反映させることによりモチベーションは高まるものと考えられます。また、高齢になった場合、金銭面だけで働いている方だけではないでしょうから、高齢者に対して若年層の育成や技術の継承などの役割を明確に伝えることにより、高齢者の自覚が高まることが期待されます。
各社各様状況は相違されると思いますが、70歳までの雇用が法制化されるわけですので、法制に従うだけでは生産性が高まりません。法制化される前から上記のような視点を取り入れ、実態に即した検討をするとことが必要なのです。
高年齢者雇用に伴って中小企業が活用できる助成金を国も用意しておりますので、以下を参照し活用していただければと思います。ただし、制度の内容は変わる可能性もありますので、注意をしていただければと思います。
○65歳超雇用推進助成金   https://www.mhlw.go.jp/content/000497460.pdf

NPO法人中野中小企業診断士会 堀川 一