-第124回-
事業アイデアの作り方(1)
-デザイン思考を用いたアイデア発見-

現在の市場環境は消費者ニーズの複雑化や変化のスピードが速くなっており、将来予測が困難な状況となっています。そのため、どんなに好調な事業であっても、将来にわたって永続できるとは限りません。会社が継続していくためには、既存事業が終焉を迎える前に新しい事業を作り出していくことが求められます。

今回は、問題解決の手法でもあるデザイン思考を使用して、新しい事業アイデアを作っていくプロセスを紹介します。

1.デザイン思考のプロセス
デザイン思考は、①共感、②問題定義、③アイデア発見、④プロトタイピング、⑤検証の5つのプロセスで展開されます。
デザイン思考のプロセスにおいては、問題解決方法ではなく、解決すべき問題は何かを見極めるプロセスを重視します。起きている事象をしっかり観察して本当に取り組むべき問題は何かを見極めることがアイデア発見の始まりとなります。

2.必要なのは顧客視点
新しい事業のアイデアを作るために、最初にターゲットとする顧客をどこ(誰)に置くかを決めます。次にその顧客のニーズ(既存顧客の場合、既存商品・サービスへの不満、要望など)を知るために、ターゲット顧客がどのような行動をしているかを調査します。
ユーザインタビューやアンケートといった調査で得られた情報を顧客視点に立ちしっかり分析して、顧客が真に望んでいる「潜在ニーズ」を導きだします。

カップラーメンを例にして考えてみましょう。

カップラーメンは、インスタントラーメンを発明した日清食品の安藤百福がアメリカに視察に行った際、スーパーの担当者が「チキンラーメン」を小さく割ってカップに入れお湯を注いでフォークで食べたのを見て思いついたアイデアだそうです。

もしここで、想定顧客であるアメリカ人のスーパー担当者にインタビューしていたら、「大きすぎてカップに入れるために割るのが面倒」とか「フォークだと食べにくい」とかといった意見が聞けたのではないでしょうか。

デザイン思考では、問題解決方法ではなく、解決すべき問題は何かを見極めるプロセスが重要です。つまりインタビュー結果を受けて「カップに入れやすいサイズで切れ目を入れよう」とか「フォークをギザギザにして麺をすくいやすくしよう」とかのように解決策を決めつけるのではなく、「真の顧客ニーズは何か?」を明確にし、そのニーズを満たすためにはどうすれば良いかを考えることになります。

例えば、「美味しいラーメンを食べたい」を顧客ニーズ、「どんぶりや箸が無い状態でも美味しいラーメンを提供するにはどうすれば良いか?」を解決すべき問題として定義する。という感じになります。

次回は、今回定義した問題の回答例と併せて、顧客ニーズを満たすために定義された問題を解決するためのアイデアを考える方法についてご紹介します。

参考文献:
安藤百福クロニクル https://www.nissin.com/jp/about/chronicle/

NPO法人中野中小企業診断士会  田村 亘