-第84回-
トヨタ式問題解決による人材育成第(2)
‐問題解決を利用したアクションラーニングの進め方‐

前回説明したトヨタ式問題解決手法の人材育成への展開方法について説明します。

トヨタでは、人づくりは問題解決のプロセスの中にあると考えられており、「人をつくるとは、自ら課題・問題を発見し、解決するプロセスを習得すること」という考え方です。トヨタの管理職の人事考課要素には問題解決が評価項目となっています。トヨタの上司は、問題解決のできる=自分で考えることができる、部下を育てることが仕事の一つとされています。

では、どうやって実際に人材育成につなげればよいのでしょうか。

研修段階では、アクションラーニングという研修手法を利用して、社員への浸透を図るのが有効です。簡単に言えば、前回説明した8ステップに基づいて、実際に自分の業務について問題解決を実施することです。

まず、自社の問題解決のカタ(例えば8ステップ)について、自社の業務を題材に取り上げて、講義方式で具体的に解説します。社員によって、すぐに理解できる人と、なかなか呑み込めない人がいると思います。考え方についてカタなので、繰り返し学べば必ず習得できます。粘り強く講義を繰り返して行ってください。

次に、社員に自分の業務で問題解決の対象とするテーマを選んでもらいます。そのテーマについて、カタにそって、問題明確化~対策立案まで行い、数か月間の期間を取って、カタに沿ってPDCAを回してもらいます。単に講義だけで終わらず、講義で学んだことを実際に行い、その結果を評価、検証するため、アクションラーニングと呼びます。

途中、1月単位で実施状況を確認するなどの、フォローが必要です。講師だけでなく、上司にもフォローしてもらうと効果が高くなります。そのため、事前に上司にも研修を受けてもらう必要があります。

改善活動を全社的に展開するために、トヨタ式問題解決による研修を実施したところ、全社展開がスムーズ進むとともに、その後の社員のやる気向上につながったケースがあります。

さらに、研修が終わり、実際の業務への展開を図る段階では、人事考課項目の1項目に問題解決スキルを追加すると良いと思います。社員の動機付けになります。

ご説明したポイントを参考に、是非、自社の問題解決のカタを作り上げて、人材育成を活用してください。

NPO法人中野中小企業診断士会 田中浩二