-第221回-
AIを活用したDXへの取り掛かり②
~AIの発展と自社ビジネスへの取り込み~

前回はAIの学習手法である「教師あり学習」と「教師なし学習」について解説させていただきました。今回はAIのもう一つの学習手法である「強化学習」についての説明と、AIの特性を踏まえて今後自社のビジネスにどのようにAIを取り込んでいけば良いかについて解説していきます。
「強化学習」は、システム自身が試行錯誤しながら、最適なシステム制御を実現する手法です。ロボットの歩行制御や、自動運転の実現など、目的達成のために、AIが自らさまざまな動作を試行錯誤し学習していきます。そうすることで、目的達成のための最適な行動が構築されていきます。
このようにAIは「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」を行うことにより、複雑な機械の制御や、ChatGptのような文章画像の生成、現状から将来を予想することによるマーケティング支援や物流支援、天気予報などを可能としています。
一方で前回お話しした一見簡単そうでなかなか実現しない経理処理、税務申告処理についてみてみましょう。
誰から又は誰かへの入金、出金といった情報のみでは、なんのための支払いなのか、いつの仕入れに対するものなのかといった情報は得られません。その情報を得るための元資料は請求書、契約書といった不定形な画像データから情報を解読して判断する必要があります。大量の画像データをAIに覚えさせ、その問題を解決したとしても、次はその活動は「何のため」という目的の情報が必要となってきます。他社へ転売するための仕入れなのか、自社で使用するためのものの購入なのか、その情報をAIはどこから得ればよいのか、そこの解決の糸口がなかなか見えず、実現が難しくなっています。
 AIが学習し、一定の行動につなげやすい情報は、「数値データ」「テキストデータ」「画像データ」「音声データ」「動画データ」そして数値データに置き換えた上での「温度のデータ」「においのデータ」「触覚のデータ」「距離のデータ」となります。
 ChatGptが登場し、無料ないし低額な月額料金でAIの技術を利用できるようになるなど、ユーザーにAIの知識がなくてもAIの技術をを活用できるようなサービスがChatGpt以外にも少しずつ展開され始めています。
 例えばBIツールといって社内にある販売データや生産データ、財務のデータについて様々な角度から分析を行うようなシステムにもAIの実装が進み、ユーザーが自分で仮説を立て分析するのみならず、AIがデータから相関関係を見つけるために様々な仮説の検証と実証を繰り返し、行動への最適解を提案するなどのソフトウエアが登場し始めています。
 このような技術が身近なものになっても、そのサービスに取り込むデータがなければそれは自社独自の強みにはなりません。
 AIによるDX化の波に乗り遅れないように、自社のサービスを変革していくカギとして、自社のビジネスの主要部分、物の製造過程であったり、販売セールスの手法、ノウハウなど、これらをAIに取り込んでいけるように、情報をデジタル化して蓄積していくことが重要となってきます。
 自社のビジネスの主要部分をデジタルデータとしてAIへ取り込み、より高度な生産の合理化、販売活動の最適化へつなげていくことができるのです。

NPO法人中野中小企業診断士会 河野裕樹