-第223回-
個性化戦略のススメ
~他社(他者)との「差」に着目するより、自社の「個性」に着目しよう~(2)
前回は、他社との差に囚われすぎず、自分の個性を大切にして、理想の姿、夢やビジョンの実現を目指して、自分らしく進みましょうという話をしました。今回は、個性化戦略の期待効果についてお話しします。
「自分の個性に着目しよう!」と言うと、「そうは言っても、私には(我が社には)個性があるのかな」と思う人もおられるかもしれません。でも大丈夫です。たとえ同じ地域で過ごしても、同じ学校で学んでも、同じ会社や業界で働いても、同じ家庭で育っても、同じ経験の人は誰一人としていません。その経験から感じたこと、考えたことが同じ人も誰一人としていません。個性は誰にでもあります。すでに持っています。
戦略の基本は、強みを機会に投入することです。個性はすでに持っている資源です。強みになり得ます。強みに着目することで戦略の基本に立ち返りやすくなるので、他社に囚われすぎず、シンプルに市場や顧客に意識を向けやすくなります。
また、個性に着目することには大きな期待効果が3つあります。1つめは、意思決定の判断基準が明確になることです。どの経営資源をどこに投入しようか迷った場合、「個性を大切にしているか」をひとつの判断基準にすると、迅速でブレない意思決定をしやすくなるでしょう。
2つめは、わくわくする理想の姿、夢やビジョンを思い描くことができることです。「個性を大切にしよう!」と考えたほうが、わくわくする理想の姿、夢やビジョンを思い描けるでしょう。個性は事業の羅針盤になるのです。
3つめは、組織の一体感を醸成することができることです。アメリカの経営学者チェスター・バーナードが提唱した「組織成立の3要素」で考えてみます。組織が成立するためには、➀共通目的、➁コミュニケーション、➂貢献意欲、の3要素が必要不可欠であるという考え方です。
企業理念を「➀共通目的」にするためには組織メンバー間で「➁コミュニケーション」をとって、考え方や意識をすり合わせる必要があります。このときに組織メンバーそれぞれが自社の個性を認識していると、共通言語が生まれ、コミュニケーションが円滑に進みやすくなるでしょう。そして組織メンバーが企業理念に共感すると、組織のために働こうという「③貢献意欲」が高まり、組織の一体感が高まります。また、組織メンバーそれぞれが「我が社にはこんな個性があるんだ!」と自社の個性を認識することで、自社を誇りに思うことができ、やる気が高まります。
他社を分析することは重要ですが、他社との差に着目することが目的化すると疲れます。ちなみにみなさんは「選択と集中」のどちらを先に考えますか?集中したとしても、自分に合わないことを選択していたらどうでしょう。まず自分に合ったことを選択することが重要です。自分に合ったというのは、個性を大切にすることではないでしょうか。
さぁ、個性化戦略で、理想の姿、夢やビジョンの実現を目指しましょう。
NPO法人中野中小企業診断士会 梅津勝明