-第100回-
中小企業に求められる経営戦略
- 早く試してみることが成功に繋がる -

外部環境が不透明だったり、変化が激しかったりする今日では、「そもそも事前に当たるかどうかなど誰も分からない」ことが一般的です。そうだとしたら、「とにかく早く試してみるしかない」という発想になります。

1.まず仮説を立ててすぐに試す
この発想に立てば、まず「このような製品(あるいはサービス)が受けるのではないか」という仮説を立て、プロトタイプ(試作品)を作ってすぐに試し、そこで得られた教訓を製品開発に反映させ、それをまた試すというサイクルを高速で何度も繰り返します。

「やってみなければ分からない」のであれば、「すぐにやってみる」ことが必要です。そしてやってみて得られた成果を次に活かし、製品やサービスをブラッシュアップし、事業としての成功確率を高めていくのです。

2.ベンチャー企業の戦略に学ぶ
8つのベンチャー企業のスタートアップに参加し、そのうち4つを株式公開に導いたスティーブ・ブランクは、ベンチャー企業に求められる4つのステップを提唱しています。

① 顧客発見(聴いて発見)
② 顧客実証(売って検証)
③ 顧客開拓(リーチを検証)
④ 組織構築(本格拡大)
※ただし、②でダメならピボットで①に戻る。

これを発展したものに、「リーン・スタートアップ」という考え方があります。これによれば、実用最小限の製品(MVP:minimum viable product)を素早く開発し、それをテストマーケティングで試して検証します。

ポイントは、MVPは実験に役立つ最小限度のスペックに留めることと、すぐにリリースすることです。必要以上に作り込んでも当たるかどうかは事前にはわからないですし、当たらなければ、単に時間やコストの無駄にすぎません。つまりリスクが高いということです。最小限度のものにとどめることで早くリリースすることができ、その後の改良に活かすための結果が早く得られるのです。提唱者であるエリック・リースは、「大きく考え、小さく試す」ことを強調しています。

「とにかく早く試してみるしかない」といっても、何も当てずっぽうでやってよいというわけではありません。MVPは「これなら当たるのではないか」という仮説のもと、自分たちが試したいことが検証できるように作り込む必要があります。

簡単な具体例を示してみます。高齢者向けのスマホを開発するのであれば、「あまり機能は多くないほうが使いやすいだろうから、最低限の機能に絞ってみよう」とか「表示の大きさはこれくらいのほうが見やすいかな」といったことを考えて試作品を作り、それを実際に使ってもらって「正しかったかどうか」「何が不足しているのか」を確かめるということです。

「リーン・スタートアップ」はベンチャー企業の経営戦略についての考え方ですが、それに限らず、新事業や新製品・新サービスを考えている方に共通して参考になるはずです。「実験⇒検証⇒学習」というサイクルを繰り返していくうちに、ノウハウが蓄積され、それが企業としての「強み」にもなっていきます。

「成長のための大きなビジョンをもって、小さく試す」という考え方は、特に経営資源に限界がある中小企業経営者や創業希望者のみなさんにとってぜひ知っておいていただきたい考え方です。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元