-第99回-
中小企業に求められる経営戦略
- 変化が激しい時代の経営戦略の立てかた ―

「事業を成功させるためには戦略が必要だ」とはよくいわれます。ビジネス書やセミナーなどで経営戦略の策定のためのフレームワークを見聞きした読者の方もいらっしゃるでしょう。
しかしながら、こうしたフレームワークは外部環境が不透明だったり、変化が激しかったりする今日では、既に時代遅れのものとなっており、経営学の世界でも取り上げられることが少なくなりました。
今回は、変化が激しい時代に求められる経営戦略の考え方「仮説検証アプローチ」について説明します。

1.よくある経営戦略策定のプロセス
中小企業経営者や創業希望者向けの教育の場で紹介される経営戦略策定のプロセスは、概ね次のようなものです。

・ビジネス上の「機会(外部環境の変化や顧客ニーズなど)」を分析する。
・自社(自分)の経営資源上の「強み」を分析する。
・「機会」と「強み」がマッチングするように自社の経営戦略を立てる。
・不足する経営資源があれば、外部との提携などを含め補完する。

たとえば、サービス業において、強みが「顧客対応力」で、機会が「少子高齢化」だとしたら、「高齢者向けのきめ細かいサービス事業を展開する」といった具合です。

要は「ビジネスチャンスがないかしっかり分析し、強みを活かせ」というわけです。これ自体はもっともな話なのですが、こうした経営戦略の立て方はあまり現実的ではありません。

2.事前に当たるかどうかなど誰も分からない
なぜなら、「そもそも事前に完璧に分析することなど不可能である」ということです。大手企業の新規事業や新製品・新サービスの8割近くが失敗するともいわれます。おそらく多額の費用をかけてマーケティングリサーチなどを行って、慎重に市場環境を分析したでしょうが、それでも散々な結果なのです。

またベンチャーキャピタルの経験豊富なベンチャーキャピタリスト(有望なベンチャー企業に投資・支援して株式上場まで引き上げる職業)でさえ、成功確率は10%ともいわれます。

さらに、「自社(自分)に『強み』がなかったらどうするのか」という疑問も残ります。「強み」というからには、他社に比べてかなり優れていることが条件になりますが、実際にそこまでの優位性がある経営資源を持つ企業はかなり少数派です。成功した企業も創業時から圧倒的な強みなどなかったわけですから、「『強み』が存在することが経営戦略の絶対条件ではない」ということになります。

たとえばマイクロソフトやアップル、フェイスブックの創業者は、いずれも大学生時代(あるいは中退直後)に起業していますから、アイデアはあっても最初から圧倒的な強みがあったわけではないでしょう。

「そもそも事前に当たるかどうかなど分からない」としたら、「とにかく早く試してみるしかない」という発想になります。次回はこの点についてお知らせします。

NPO法人中野中小企業診断士会 三枝元