-第90回-
上司が部下のやる氣を引き出すために必要な3つのポイント(2)
-部下が勝手にやる氣になる環境作り-

前回は、部下のやる氣を引き出すためには上司の『在り方』が重要で、『見本』『信頼』『支援』のキーワードを意識して部下とコミュニケーションを取ることをお勧めしました。

管理職というと部下をコントロールする役割のように捉えがちですが、私は『部下が力を発揮できる環境を整える(管理する)役割』を担っている人と定義しています。

究極は、上司があれやこれやと言うまでもなく、社員が自らが目標を設定して行動し、成果を出しながら成長していくことでしょう。理想論だと思いますか?

私は社員が会社を通じて実現したい夢を語るプレゼンテーションを作成することで、自律的な社員を育成する研修の講師として関わっています。最初は会社に通勤する環境に文句を言っていた人が社会貢献に繋がる大きな事業を考えるように変わっていくような姿を見てきました。

会社の事業を通じて実現したい『自分の夢』を見つけた社員は自らが率先して動き、成長していきます。

(事例)社員の夢が新規事業に繋がったA社
A社は、中古品の販売を行っています。社長の肝いりで社員が会社を通じて夢を語るプレゼンテーション大会を実施。代表者数名がプレゼンテーションを行いました。当初は、会社の体制に対する不満などが出ていましたが次第に自分達の夢が明確になりました。社員がどんどんやる氣になっていきます。
プレゼンテーション大会当日は「社員がこんなにも会社の事を考えてくれた」と社長が号泣。社員の一人が語った夢がそのまま新規事業として採用されました。

(事例)廃業の危機を古参社員が救ったB社
B社は、親族経営の工務店です。縁があって複数の企業が合同で実施したプレゼンテーション大会に参加しました。そこにB社の代表して古参の職人が参加していました。当初は講座への参加にも消極的でしたが、自分の夢が明確になってくるにつれて姿勢が前のめりになってきました。それからしばらくして会社が存続出来るかどうかの危機が訪れ、社長は廃業を検討していました。その時「自分の夢を叶えたいから頑張りましょう」と存続の後押しをしたのは夢を語った職人でした。

部下が勝手にやる氣になる環境を作るのは容易なことではありません。しかし、会社の理念や社長の思いに社員が共感し、会社の事業を通じて実現したい自分の夢を重ねた時、それは大きなパワーになります。社員個人の価値観に適合した仕事に対しては、自分で勝手に成果を出していくのです。

まずは部下の夢を聞いてください。そして自分の夢を語ってください。上司と部下がお互いに夢を語り合える環境作り、コミュニケーションが初めの一歩になります。

NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文