-第87回-
お金を掛けずに店舗の魅力を引き出すちょっとした工夫(1)
-お客様にはあなたの店を選ぶ理由がある-

商店主とお話をしていると、「もっと集客したいんだけど、お金が無いんだよね」「品質ならどこにも負けない自信があるのに、なかなかお客が来ないんだ」「常連さんが来なくなってしまった、あんなに仲良くしていたのに薄情だ」なんて話を聞くことがあります。

気持ちはとっても良く分かるのですが、もう一歩踏み込んで「なぜお客様が来なくなったのか」をお客様の視点から考えてみましょう。

ある飲食店の古参客にヒアリングした際「店主が一部のコアな常連客ばかりと話をしていて、大切にされていない感じがするので足が遠のく」なんて意見も出ました。お客様が薄情なのではなく、店主の対応に問題があった訳です。

沢山の競合店がある中で、自分のお店を選んでくれるお客様は本当にありがたいですね。
来店してくれるお客様には必ずその理由があります。
「とても美味しい」ということかも知れませんし、「スーパーで買うより格段に新鮮で安い」ということかも知れません。「店主その人のファン」なんてこともあります。

自分のお店の魅力を客観的に理解しておくことはとても重要です。その為にお客様に投げかけて欲しいキーワードがあります。

「当店のどこが好きですか?」

この答えが、お客様に自店が選ばれる魅力に触れている可能性が高いので、より多くのお客様に支持されている「好き」の部分を強化していけば自然とお店の魅力は高まっていきます。

(事例)スタッフの接客が集客に繋がったA店
A店は社員数2名の甘味店です。店主の接客にファンが多く、店主と話をしたいがためにわざわざ遠くから来店するお客様もいました。そのため、店主がお休みの際にはそのまま引き返してしまうお客様もいて、店主の不在時でも集客することが課題になっていました。当初は顧客との会話もあまりしないスタッフでしたが、店主の見本や働きかけで顧客との会話をするようになり、逆にスタッフ目当てで来店する顧客も出始めました。「接客」という魅力を高めた結果です。

お店の運営が忙しすぎたり、訊くのがちょっと恥ずかしかったり、意外とお客様とのコミュニケーションの中で見えてこないのがお店の魅力です。ぜひ意識して質問してみてください。
お金も大きな手間もかかりませんが、お店の魅力を高めていく上で大きなヒントになります。

次回は、お客様に来てもらうためにやっておきたい工夫についてお伝えします。

NPO法人中野中小企業診断士会 鈴木佳文